『アナログ』から『デジタル』へ
『過去の着順』『当日の仕上がり状態』『馬体』『血統』『相馬眼』『格』『調教』を重んじる方法が80年代の競馬を語る上で最も重要視された競馬言語です。競馬評論家や競馬ファンが走破時計に目を向けることはなく、例え優秀なタイムを出している競走馬が出走してきても高い評価を受けることはほとんどありませんでした。時計のことに触れる競馬評論家がいたとしても、『この馬の持ちタイムは…』などのように、開催日時・場所、コース特性、馬場状態、クラスの比較をまったく無視したものであったために、持ち時計で馬券が獲れることは無かったのです。
90年代になるとスピード指数は、画期的な予想法として発表されることになります。持ち時計では競走馬の能力を比較出来ませんでしたが、馬場指数・距離係数の導入で持ち時計を縦・横で比較出来る数値化に成功したのです。『この馬が前走1600万下で出したタイムは、その日のオープンのタイムと比べて・・・』とか、『今日の馬場状態は時計ひとつ半速い』等々タイムが形成される要素を比較検討する表現が広く使われるようになり、合理的な予想が行なわれるようになりました。
スピード指数が発表されて約十年。発表当時スピード指数で簡単に獲れた万馬券はすっかり影を潜めました。日本の競馬形だけをヨーロッパスタイルに似せ、スローペースが目立つようになるとスピード指数神話の崩壊が始まりだしたのです。元々アメリカから輸入されたスピード指数は、ダートと芝の短距離でしか威力を発揮せず、芝の中長距離はペースの影響がタイムに大きく影響するためスピード指数では役に立たなかったのです。
スピード指数は次の2点の仮定の上に成り立っています。
1.走破タイム優先の仮定
2.競走馬全速力の仮定
1…スピード指数にとっては当たり前なんですが、1着馬から順に高い指数が割り振られていきます。タイムの悪い競走馬はタイムの良い競走馬よりも自動的に『弱い』と判定されてしまいます。しかし、実際のレースは、指数が低くても指数の高い競走馬に勝ってしまうことは良くあることです。この大きな理由は、タイムを形成する要素が走破タイムの内部に隠れてしまったことによるものと、レースに出走するまでの間、競走馬の状態が変化することがあるためです。
2…競走馬が速いスピードで走れるのは400〜800mが生物学的限度のため、競走馬とは常に全力で走っているというこの仮定も無理があります。ただし、1200mで○○のタイムが出せる実力を持っている競走馬なら3600mで△△のタイムが出せるということを計算で求めることができます。実際のレース結果も計算値と非常によく一致するので、ペースごとに上がりタイムを数値化するほうが儲かるのかもしれません。
『スピード指数の使い方』
スピード指数では予想がしやすいように、前走指数の高い順にA、B、C、Dを表示し、1〜5走前の指数が高い順にX、Y、Zを与えています。前走と過去5走内でどちらも指数上位ならAXの様にランクが重複します。そして、スピード指数の思想の根底には指数の高い競争馬がレースを征するという暗黙の了解があります。つまり、Aランク付き競争馬の流し馬券かランク上位のBOX馬券を購入することで、競馬に勝利できるようになるのが目的なのです。ただし、タイム理論は一番指数の高い馬から買うのが基本ですから、ランク上位のBOX馬券を購入するのはアレンジにあたります。
スピード指数は走破時計の指数化により、各競走馬の能力を比較することが目的です。つまり、ランクの付いている競走馬を自動的に購入して儲けるために生み出したのですが、これは『走破タイム優先の仮定』による非常に危険な考え方です。
レースを数多く見ていると、本来ありえないはずの人気薄の競争馬が激走してしまうことがあります。もしかすると薬物か薬物にかわるものを使用しているのかもしれませんが、信じられないことがおこるんです。今後2度と無いような激走をした馬でも、『走破タイム優先の仮定』より高く評価されるのはいうまでもありません。
また、レースは競走馬が通った馬場状態、競走馬の体調、レース展開、風向きなどの要素が絡んで一つの走破タイムが形成されます。同じ条件かそれに準じる条件が揃えば、同じ指数を出すことが可能でしょうが、実際は中々難しいでしょう。また、ほとんどのスピード指数愛好家は、スローペース以外に競走馬の能力が正しく評価されない場合があることに気が付いていません。おまけに、スピード指数を平均して使う人がいますが、国語100点、数学0点の人の能力は50点を取る能力を持っていると評価するでしょうか?国語50点、数学50点を取る人と競ったときにどういう勝敗になるでしょう?
国語のテストをやるなら前者が勝ちますし、数学なら後者が勝ちます。しかし、この両者が私立大学を受験するなら、前者の方が有名私大に合格できる可能性があることがわかりますね。
予想の基本は、能力の高い競走馬を選んで、後はその能力が発揮できるかどうかを考えるところにあります。つまり、90年代の主流であるスピード指数で能力の高そうな競走馬を選び、80年代の主流であるレイティング的発想で能力が発揮できるかどうかの判断を下します。これが、スピード指数を使った正しい予想のスタンスといえるでしょう。
『スピード指数の算出法』
競馬の予想方法には沢山の種類があり、出目、サイン、馬名、占い、データ、格、血統、情報、オッズ、相馬、騎手、展開、ラップ、馬場、レイティング、スピード指数とあります。が 競走馬の能力を把握するには、血統、相馬眼、レイティング、スピード指数が有効です。
世の中番狂わせはそうそう起きるものではありません。偏差値25の人間が現役で東大に合格することなど考えられませんね。競馬も同じで、弱い競走馬が強い競走馬に勝つことはそうはありません。だから、競馬の予想をするときにはまず、個々の競走馬の能力を把握することが、第一歩です。
では、早速スピード指数の説明に入りましょう。スピード指数というのは競走馬の走破タイムを数値化したものなのですが、この数値化の方法が凄い!
各競走馬の走破タイムはそのままでは比較できません。同じ距離でも場所によっては、雨で馬場がやわらかくなって走りにくかったりします。田んぼの中で走る人と砂浜で走る人を走破タイムで直接比較するのと同じことですからね。また、経験したことのある距離が違う競走馬も比較しなくてはいけませんので、。競馬新聞に記載されている「持ちタイム」はそのタイムを出した時の条件がそれぞれ異なるので、それをそのまま比較してもあまり意味がないことはお分かりだと思います。
例えば、A馬は東京の芝1600mを1分34秒5で走った。B馬は東京の芝1600mを1分35秒5で走った。さてどっちが速いでしょう?と比べても、それぞれの日の馬場状態を加味して考えないと間違った結論を出してしまう可能性があります。タイムは1秒Bの方が遅いですが、AとBが競った場合にBが勝ってしまうことも考えられるのです。
例えば、同じ日にA馬は東京の芝1600mを1分34秒5で走った。B馬は東京の芝2000mを1分58秒1で走った。さてどっちが速いでしょう?とくらべても、異なった距離で走っている競走馬ですから、きちんと距離のこと、を加味して考えないと間違った結論になってしまう可能性があります。
こういった、日にちの違う馬場状態、距離、競馬場ごとの違い等も含めて同じ物差しの上で比較しようというのがスピード指数なのです。また、指数によってはクラス補正を行っているものや斤量を考慮しているものもあります。スピード指数はある程度の能力の比較に成功しただけであり完全ではありません。従来のスピード指数では考慮していない要素が存在し、それがレース結果に大きく影響を与えているものもあります。
では、従来のスピード指数を計算する一般的式を説明します。
スピード指数= (基準タイム−走破タイム)×距離指数+馬場指数+(斤量−55)×2+80
です。次は各要素を簡単に説明してみましょう。
*基準タイム
各競馬場ごとに500万と1000万条件の中間の能力を持っている競走馬をイメージして、その競走馬が全力で走ったときに出すタイムを基準タイムにしています。実際の計算では1〜3着馬の走破タイムを平均しています。
基準タイム−走破タイムの数値が大きくなるほど速く走れることを意味し、この基準タイムよりどのくらい速いのかによってその馬の実力を判断します。また、スピード指数では1秒を10として、0.1秒を1として表しています。
現在は関東馬よりも関西馬の方が強くなったといわれるようになりました。1流大学生と3流大学生が同じテストを受験した場合に平均点で一流大生の方が高くなることが予想できます。つまり、関東の基準タイムと関西の基準タイムは同じ能力をもっていることになりますが、実情はそういうわけではありません。このことも考慮するべきだと私は思います。
*距離係数
実際のレースでは様々な距離で走ってきた競走馬同士のレースになります。そのため、単純にタイムを比較できるようにしたのが距離係数です。
この指数は 1秒÷基準タイム×1000 の計算式から求められたものです。 1600mが1.0になり距離が長くなれば小さく、短くなれば大きくなります。この係数を用いることで長距離、中距離、短距離の着差1秒の価値を同じものにしました。
ただし、短距離選手と長距離選手を比べた場合、マラソンで優秀なタイムを出す高橋選手が短距離を走ったからといって、末続選手と同タイムを出せるかというと疑問です。この距離係数なるものは、非常に取り扱い方が難しいのです。しかし、ちょっと数学を勉強すると距離係数を使うことなく、タイムを予測することが出来るようになります。年間の基準タイムを元に計算すると誤差範囲が99%から102%以内に収まり、長距離になったときのあやふやな距離係数はまったく必要なくなります。これは、きっと血統や厩舎のトレーニング方法まで影響する凄い式の発見です。交配の段階でどのくらいのスピード能力を発揮できる馬体であるかを遺伝レベルで予測できるのですから。
*馬場指数
熱心な競馬ファンは、競馬予想の重要なファクターにタイムを選ぶことが多いですが、初心者のタイムハンディキャッパーは皆、同じ日ならともかく、時期や場所が違う開催のタイムを比較する方法について悩んだすえに考えつくのが『馬場差の補正』です。これは、ある特定のタイムを設定し、開催場所別・日付別に、そのタイムとの差を記録し、『この馬が前走1600万下で出したタイムは、その日のオープンのタイムと比べて・・・』とか『今日の馬場状態は時計ひとつ半速い』とか『5回東京5日目は、前の週より1秒速い』というような比較をする方法です。
また芝に限らずダート戦でも馬場状態は走破タイムに少なからぬ影響を与えます。競馬場が同じでも、開催日が違うと馬場状態も変わってくるので、異なる馬場状態を数値化して、芝及びダート両方で比較検討できます。
この馬場指数の考えで、仮にレコードタイムで走っても、同日の他のレースで好タイムが続出していれば、馬場状態が極端に良かったと判断されるので、能力値はさほど高くはなりません。
各競馬場では仮柵を設けてインコースの芝を保護し、開催後半に内側と外側で馬場状態の差があまり生じないようにしていますが、それでも雨の中での競馬など、天候によっては走破タイムに2〜3秒、指数にして20〜40もの影響を与えることがあります。
使用コースをA、B、Cと使い分けたり、4コーナーを回ってから内、中、外で馬場状態が違ったりと、レース全体の馬場状態はある程度数値化できますが厳密ではないのが実情です。
*(斤量−55)×2
異なる斤量で走ってきた馬たちの比較をするために、55kgを基準にしてそれより重い斤量、例えば58kgなら(58−55)で3を、逆に軽い54kgなら(54−55)として計算します。
次に通常、斤量の走破時計への影響は1kgが0.2秒と考えるのが一般的のようですので、指数上、各斤量差に2を掛けて58kgの時の3なら3×2で6、54kgの時の−1なら−1×2で−2をそれぞれ指数から加減します。
小学生の時にランドセルを背負い走った経験があると思いますが、ランドセルが揺れて走りにくかったですね。また、眠っている人を抱きかかえるときは重く感じるはずです。騎手の騎乗フォームを見ると明らかに上手下手がわかりますから、騎手の技術によって斤量以上に競走馬に感じさせたり、、感じさせなかったりと違ってくるでしょう。
*+80
計算式の前半部分までで「基準タイムと走破タイムの差」に距離指数を掛けましたが、これだと数値にプラスとマイナスが混在して分かりにくくなるので、便宜上80という数を足して個々の馬の出した指数を比較しやすい様にしてあります。この数字には意味はありません。
以上がスピード指数の計算式の説明です。
それでは実際にスピード指数を計算してみましょう。
| 2002年 | 11月24日 | 中山 | 4回 | 8日 | 9R | 芝 | 右回り | 1600M | キャピタルステークス | OPEN | 発走:14:40 |
| 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | タイム | 馬体重 | 増 | 通過 | 位置 | 前3F | 後3F | 人気 |
| ローエングリン | 牡3 | 55 | 岡部 | 01:33.5 | 478 | (+8) | @@@@ | 最内 | 35.1 | 35.3 | 2 |
| ラップ(SorM) | 12.6-11.2-11.3-11.5-11.6-11.7-11.6-12.0 |
| 通過 | 35.1-46.6-58.2 |
| 上がり | 46.9-35.3 |
| 2002年 | 12月1日 | 中山 | 5回 | 2日 | 10R | 芝 | 右回り | 1600M | 市川ステークス | 1600 | 発走:14:45 | ||||
| 馬名 | 性齢 | 斤量 | 騎手 | タイム | 馬体重 | 増 | 通過 | 位置 | 前3F | 後3F | 人気 | ||||
| プレジオ | 牡4 | 57 | 岡部 | 01:33.5 | 432 | (+4) | LIGD | 中 | 34.8 | 36.1 | 1 | ||||
| イカルスドリーム | 牡6 | 56 | 横山賀 | 01:33.5 | 506 | (+8) | @AA@ | 内 | 34.2 | 36.7 | 2 | ||||
| リベレーション | 牡5 | 56 | 菊沢徳 | 01:33.5 | 490 | (+12) | OOOK | 最内 | 35.4 | 35.6 | 12 | ||||
| ラップ(H) | 12.4-10.6-11.1-11.2-11.5-11.6-12.2-12.9 |
| 通過 | 34.1-45.3-56.8 |
| 上がり | 48.2-36.7 |
| 中山芝1600mの基準タイムは1.38.4と仮定して秒数に換算すると98.4とします。 ローエングリンの走破タイムを1.33.5も秒数に直すと93.5です。0.1秒が指数1になるわけですから、 それぞれ984と935になります。 1600mの距離指数は1、中山1600m当日の馬場指数は−20と仮定します。 (984−935)×1+(−20)+(55−55)×2+80=109 となって109がこの馬のスピード指数です。 考え方は難しいところもありますが、計算自体は非常にシンプルで手計算で十分出来ます。問題は、基準タイムと馬場指数の作成です。基準タイムはそんなに正確でなくても、馬場指数に含めて処理をすれば良いので、キチンとした評価をレース結果ら読み取るだけで、全競走馬の能力を比較できるようになります。それが面倒ならパソコンの自動計算ソフトもありますし、市販されている指数も沢山あります。 。 この109という指数を今回出ている他の馬の指数と比較して今回勝つ馬はどれかを考えていくのがスピード指数による勝馬検討なのです。 |